自意識朦朧

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【書評】東京の夫婦:松尾スズキ

東京の夫婦

  • よる年の瀬に完全敗北してる
  • 年の離れた嫁に完全敗北してる
  • 松尾スズキの才能に完全敗北してる

「僕、51歳、福岡出身。M子、31歳、茨城出身。東京で出会った」

東京で家族を失った男に、東京でまた家族ができた。
夫は、作家で演出家で俳優の51歳。妻は、31歳の箱入り娘。
東京で出会って、東京で夫婦になった。
ときどきシビアで、ときどきファンタジーで。
東京の夫婦はたくさんいる。そのどれにもドラマがある。
これも一つの東京の夫婦のストーリー。


「大人計画」を主宰し、作家、俳優として活躍する松尾スズキさん。2014年に「普通自動車免許を持った一般の女性」(著者twitterより)と再婚した松尾氏がその結婚生活を綴ったエッセイ「東京の夫婦」(雑誌GINZAで2015年より連載)が単行本化。松尾氏ならではの諧謔的で赤裸々な描写に笑いつつ、ときに本質を鋭く見据えた視点からあぶりだされる「今の社会に漂う閉塞感や歪み」に共感させられる、多面的な魅力を持つ作品となりました。「今までの著作の中で最も文章を練り上げて書いたものの一つ」と著者も認める、34の「結婚」の像。

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50歳は誰でもただのおっさん

松尾スズキ。日本で一番チケットのとれない劇団『大人計画』主宰。演出家で戯曲作家、役者で監督で小説は芥川賞候補。

推して知るべしの才能の塊、とんがった感性の持ち主という印象だが、50歳ともなると皆感じることは同じなんだな、おっさんなんだなと…そんな風情が感じられるエッセイ集。

エッセイが好き

どんな硬派な作家でも、普段のガチガチ戦闘体勢の文体から一転してグッダグダに脱力した文体になるエッセイ集が好き

肩肘はらず自然体。よる年波にも勝てず、やれ身体が痛いだの、隣近所の出来事(大半愚痴)を垂れ流す、時代の流れの速さへの呪詛などなどなど、思うところが同じなだけ共感しつつも、そのウィットにとんだ語り口が心地よい。

ショートショートな展開なので、スキマ時間にちょっとずつ読めるってのも好きな理由。

松尾スズキ51歳、再婚

松尾スズキ氏のエッセイ集は結構前からチョイチョイ読んでたのね。寝言サイズの断末魔とか…

当時のものは演劇仕事バリバリで内容も仕事寄りのものばっかりだった印象。

元奥さんがファンキーなキャラクターでよくネタにされてたね。

文章もボヤキに恨みつらみと思うがままにシャウトする。

 

それから10年以上の月日が流れ、51歳にして30も年下の女性と再婚。

重ねた月日のせいか、中年男性の哀愁か、文体は当時と比べてとても穏やかな印象を受ける。

今の奥さんが普通免許を持った普通の常識人で頼りがいのある人っぽいので、頼ったり頼られたり、とてもいい関係のようね。

とはいっても日和ったという感じもなくて、姉との確執や母親の介護、複雑な家庭事情もせきららにあっさり吐露してたりと性根はロックです。

 

なんだか大人計画のファンになって、あの熱量と共に歩んできた人にとってちょっと一休みみたいな、ホッとする内容の本でした。

 

東京の夫婦

東京の夫婦

  • 作者:松尾スズキ
  • 発売日: 2017/08/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)