観客すら黙らせる『刑事ニコ/法の死角』
公開 | 1988年 |
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制作 | アメリカ |
時間 | 99分 |
監督 | アンドリュー・デイヴィス |
出演 | スティーヴン・セガール/パム・グリア/シャロン・ストーン |
スティーブン・セガールの初主演作。製作・脚本も兼ねており、セガール主演作の一貫した無敵像はすでにこの段階で垣間見える。
元CIAの特殊工作員で現在はシカゴの敏腕刑事セガール。特技は合気道。悪いやつの手首は全て折る。でも決して悪には折れない典型的な勧善懲悪もの。
ブレイク前のシャロン・ストーンや当時は黒人アクション女優のアイコンであったパム・グリアなどが華を添えており、今観ると配役の妙が冴える。
世の映画ジャンルには「〇〇の前と後」という基準がある。
〇〇には映画タイトルが入る。その作品によって以降製作される世界観の在り方、演出表現まで変わってしまうような強い影響力、エポックメイキングとなった神作たち。
例えばSFなら『スターウォーズ*1』、サイバーパンクなら『ブレードランナー*2』。ミリタリーなら『プライベート・ライアン*3』といった感じ。
そこへきてセガールである。
90年前後アメリカのアクション映画といえば筋骨隆々の役者が腕をぶん回して殴り合うプロレス的な演出がほとんどであった。
そんな中『合気道』というオリエンタルな武道を引っさげてデビューしたスティーブン・セガール。
無表情に敵の手首をバキバキに折るセガール。
どこから敵が来ても最小限の動きで鼻を折るコスパがいいセガール。
「力」ばかりが目立つアメリカアクションに「技」を持ち込んだのは、まさにエポックメイキングといえるのではなかろうか。
そんな立役者のセガールであるが、どういうわけか語られることが少ない。
それどころか、毎年B級作品を量産する「沈黙…wのおっさんw」という扱いなのである。
何故であろうか?
いつ頃からか固定化されたソリッドな生え際が原因か。
溢れかえる安岡力也*4感であろうか。
僕は彼の持つ「絡みづらさ」なスタイルにあると思う。
彼の出演する作品はその殆どが主演であるが「オレ様」の世界である。
彼の周りの人々は例外なく彼を尊敬し崇め称える。敵でさえも一目置く男。
「世界の中心で、オレがなぐる」
「オレか、オレ以外」
それがセガール作品だ。
ゆえにそこに漂うのは、気軽に声をかけられない泥土のような空気。日常生活に支障はないがシャレが通じない隣人。寡黙なジャイアン。
どれだけラジー賞*5常連の「沈黙シリーズ」を重ねようとみな畏敬の念をこめて「兄貴」と呼ぶ。
それが彼のキャラクターだ。
そのオーラはモニターを通じて伝染する。
なぜか観客ですら「語りづらい」そんな空気を醸し出す。
とどめにプーチンとプライベートで仲良し
極悪な情報だ。
アンタッチャブル。
彼のことは多く語れない。
そう思わせる稀有な俳優スティーブン・セガール。
これからもその唯我独尊なスタイルを貫いてほしいと思う。
- セガールは特徴があって書きやすいね。筆の強弱と滑らかさがうまく出せません。筆圧強男の悩み。