エロいなシャルロット『サンバ』
公開 | 2014年 |
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制作 | フランス |
時間 | 119分 |
監督 | エリック・トレダノ/オリビエ・ナカシュ |
出演 | オマール・シー/シャルロット・ゲンズブール/タハール・ラヒム |
大ヒットを記録したフランス映画「最強のふたり」のエリック・トレダノ&オリビエ・ナカシュ監督と主演のオマール・シーが再タッグを組んだハートフルコメディ。
移民であるオマール・シーの「いい人っぷりに感化されてみんなハッピー♪」な展開を予想しがちだが日本人目線でみるとそこまでいい人でもない。だがそこがいい。
中高生の時分、VHSで借りた『なまいきシャルロット*1』を親に隠れて鑑賞。問題のシーンだけを繰り返し繰り返し観る薄暗い思春期をすごしたもんです。無論ストーリーは知らない。
シャルロット・ゲンズブールとはそんなワンシークエンスの初恋であった。
数十年経ち、再度相見まえたのは『ニンフォマニアック*2』というこれまた衝撃作。本編は未見であるが、海外の無修正版のインデックスを見てしまう。
多淫症ゆえに不感症になってしまった女をまさに体当たりで熱演しており、一部CGを使っているとはいえ絡みのシーンはハードコアポルノといっても過言ではない超過激な作品。
初恋の女性に大人になって再会したら、まあまあ前向きに風俗嬢になっていたような気分。
胸にざわつく背徳感と黒い期待を抱かざるを得ない女優。それがシャルロット・ゲンズブールだ。
そんな彼女がハートフルコメディである。あの常に陰(淫)をまとった彼女がコメディである。頭が追いつかない。そんな視線は持ちあわせていない。
垂れ流される熟成されたエロオーラと年増の悲喜との巧みなミックス。ブルーチーズの如き癖になる臭気。それが僕の中のシャルロット・ゲンズブールである。
ちなみのストーリーは主人公のサンバがその笑顔で人々を幸せにするとかいってるが、結局人の女と寝取って大揉めである。
フランス映画って…
- 水彩っぽいのを目指したが昭和映画看板風に。。難しいね。
登場人物だいたいサイコパス『ゴジラvsビオランテ』
公開 | 1989年 |
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制作 | 日本 |
時間 | 105分 |
監督 | 大森一樹 |
出演 | 三田村邦彦/田中好子/高嶋政伸/峰岸徹 |
ゴジラシリーズ17作目。平成ゴジラシリーズでは第一弾となる作品だが、舞台としては前作『ゴジラ』の直後からスタートするため直接の続編にあたる。
シリーズ中、最もグロい見た目かつ悲しきフランケンとして誕生したビオランテだが、思いのほか出番は少ない。
それよりもゴジラ出現に備えて対策を練る自衛隊やゴジラの細胞で金儲けしようとする企業を含めたワチャワチャした人間ドラマが見どころである。
恐縮ながらゴジラシリーズはこの『ゴジラvsビオランテ』と『シン・ゴジラ*1』しか観たことがない。
しかしこの『バトルヒーター*2』を彷彿をさせるビオランテの造形だけが妙に生々しく記憶に残っている。子どもへの配慮を無視したグロさよね。
実はゴジラの登場は物語が半分近く進んでから。
どちらかといえば焦点はゴジラという災害への対策を講じる自衛隊や利潤を追い求める企業とのイザコザなど「人」に比重が大きい。この点はシン・ゴジラとも共通点があるかもしれない。
大きく異なるのはシン・ゴジラがゴジラへの対応を実際に我々が体験した震災にダブらせて、政府や各省庁の対応をリアルに描いているのに対し、今作はどうにも登場人物がうろんな存在。
事故で娘を失った植物博士がゴジラの細胞と娘のDNAを組み込んだ植物を融合。超絶進化を遂げビオランテが誕生するわけだが、これは博士の倫理観皆無の100%のエゴで作り出したよね。
そしてビオランテに呼応して出現するゴジラ。この事態の元凶で間違いないこの博士、ことが進行してもまったくの傍観者。常にヌボーっと立っている。
早く病院か警察に連絡を。
ストーリーを引っ張る人間側の主人公三田村邦彦。
男前感を前面に押し出したアクションを披露。しかし仲間が死のうが目の前で殺し屋が蒸発しようが、次のカットではケロッとして田中好子とイチャイチャウフフである。
殉職した相棒根岸徹が不憫でならない。
極めつけは当時若手俳優の高嶋政伸。
昨今の怪演とは比べ物にならない終始無表情な自衛官。演技スタイルなのか腹話術人形のほうがまだ感情があると思えるクレバーっぷり。
ボタン一つで殺し屋を蒸発だー。
そしてほぼ瞬殺されたビオランテをあとに「ちょっと熱があるんで帰ります」的に海中へ没するゴジラ。
それをなんとなく納得して見送る一堂。
人のエゴと無力感だけが漂う。
ただ一点眼福だったのは、スーパーX2のオペレーターである若き日の豊原功補と鈴木京香。裏でデキてそうな雰囲気がたまらない。
- どうやっても手数が多くなる。もっとシンプルな塗りで表現したいなぁ。。
脚色というクラッシャー『47RONIN』
公開 | 2016年 |
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制作 | アメリカ |
時間 | 121分 |
監督 | カール・リンシュ |
出演 | キアヌ・リーブス/真田広之/柴咲コウ/浅野忠信/菊地凛子 |
キアヌ・リーブス主演、忠臣蔵をベースにしたファンタジー・アドベンチャー。
日本の心『忠臣蔵』のベースプロットがあることはわかるが、実在しない下男と赤穂の姫のラブストーリーというディズニーの如き王道路線に。
日本人の「コレじゃない」のため息がこだまするなか、海外でもイマイチ刺さらなかったようで酷評が目立つ。
2020年Netflixで続編の製作が報じられた。マジで。
ここ10年で日本人俳優によるハイウッドでの活躍がとても多くなってきた。
やはり筆頭は渡辺謙だろう。『ラスト・サムライ*1』で見せたネイティブではないが堂々とした英語は、英語アレルギーのある日本人に勇気を与えてくれたように思う。
それを引き金に日本の文化、歴史イベントにも注目度が集まっているのであろうか。
もとより海外ではキラーコンテンツである「忍者」「侍」。
侍の在り方の見本ともいうべき『忠臣蔵』に目をつけるのは当然かも知れない。
してこの作品を観覧済みの方にお聞きしたい。どう?これ。
僕の感想はキアヌ・リーブス主演で!日本人俳優が大挙して出演なのに!である。
まず!ベースは紛れもなく忠臣蔵である。それは間違いない。
ただし物語を引っ張るのがすべて非実在系キャラクター。
天狗に育てられた異国の血を引く青年キアヌ、傾国を企む妖術師菊地凛子。
そぎ落とせば、ほぼこの二人で物語が動いており、ほかは添え物に近い。
忠臣蔵という骨子は走りつつも、姫との淡い恋事情と裏で暗躍する魔法使いという設定が表皮を塗りつぶす。この関係性は『白雪姫』に近いのである。さしずめ四十七士は7人の小人であろうか。
忠臣蔵は命を賭した忠義心と負けの美学という日本人の大好きなエッセンスが凝縮された史実。この日本独特のセンスをそのまま海外に持っていっても伝わりづらいというのはなんとなくわかる。
しかし、いかに下敷きとはいえ、もはやモブと化した四十七士。脚色の怖さとはかく言うものか。
- 主線のない厚塗りにチャレンジ。まだまだ大人の塗り絵感。
*1:ラスト・サムライとは:明治初期、時代に取り残された侍たちの生き様を描く傑作
観客すら黙らせる『刑事ニコ/法の死角』
公開 | 1988年 |
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制作 | アメリカ |
時間 | 99分 |
監督 | アンドリュー・デイヴィス |
出演 | スティーヴン・セガール/パム・グリア/シャロン・ストーン |
スティーブン・セガールの初主演作。製作・脚本も兼ねており、セガール主演作の一貫した無敵像はすでにこの段階で垣間見える。
元CIAの特殊工作員で現在はシカゴの敏腕刑事セガール。特技は合気道。悪いやつの手首は全て折る。でも決して悪には折れない典型的な勧善懲悪もの。
ブレイク前のシャロン・ストーンや当時は黒人アクション女優のアイコンであったパム・グリアなどが華を添えており、今観ると配役の妙が冴える。
世の映画ジャンルには「〇〇の前と後」という基準がある。
〇〇には映画タイトルが入る。その作品によって以降製作される世界観の在り方、演出表現まで変わってしまうような強い影響力、エポックメイキングとなった神作たち。
例えばSFなら『スターウォーズ*1』、サイバーパンクなら『ブレードランナー*2』。ミリタリーなら『プライベート・ライアン*3』といった感じ。
そこへきてセガールである。
90年前後アメリカのアクション映画といえば筋骨隆々の役者が腕をぶん回して殴り合うプロレス的な演出がほとんどであった。
そんな中『合気道』というオリエンタルな武道を引っさげてデビューしたスティーブン・セガール。
無表情に敵の手首をバキバキに折るセガール。
どこから敵が来ても最小限の動きで鼻を折るコスパがいいセガール。
「力」ばかりが目立つアメリカアクションに「技」を持ち込んだのは、まさにエポックメイキングといえるのではなかろうか。
そんな立役者のセガールであるが、どういうわけか語られることが少ない。
それどころか、毎年B級作品を量産する「沈黙…wのおっさんw」という扱いなのである。
何故であろうか?
いつ頃からか固定化されたソリッドな生え際が原因か。
溢れかえる安岡力也*4感であろうか。
僕は彼の持つ「絡みづらさ」なスタイルにあると思う。
彼の出演する作品はその殆どが主演であるが「オレ様」の世界である。
彼の周りの人々は例外なく彼を尊敬し崇め称える。敵でさえも一目置く男。
「世界の中心で、オレがなぐる」
「オレか、オレ以外」
それがセガール作品だ。
ゆえにそこに漂うのは、気軽に声をかけられない泥土のような空気。日常生活に支障はないがシャレが通じない隣人。寡黙なジャイアン。
どれだけラジー賞*5常連の「沈黙シリーズ」を重ねようとみな畏敬の念をこめて「兄貴」と呼ぶ。
それが彼のキャラクターだ。
そのオーラはモニターを通じて伝染する。
なぜか観客ですら「語りづらい」そんな空気を醸し出す。
とどめにプーチンとプライベートで仲良し
極悪な情報だ。
アンタッチャブル。
彼のことは多く語れない。
そう思わせる稀有な俳優スティーブン・セガール。
これからもその唯我独尊なスタイルを貫いてほしいと思う。
- セガールは特徴があって書きやすいね。筆の強弱と滑らかさがうまく出せません。筆圧強男の悩み。
冴え渡る狼狽芸『バーニー・トムソンの殺人日記』
公開 |
2015年 |
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制作 | カナダ・イギリス・アメリカ合作 |
時間 | 96分 |
監督 | ロバート・カーライル |
出演 | ロバート・カーライル/レイ・ウィンストン/エマ・トンプソン |
『トレインスポッティング』で知られるロバート・カーライル主演・監督のブラックコメディ。
モンティ・パイソンを彷彿とさせる下品で粗野なブリテッシュブラックジョークは見る人を選ぶ出来栄え。
グラスゴーの冴えない理髪師カーライルは雇用の口論の末、オーナーを誤って殺してしまう。泣きついた母親の言われるままに遺体を運ぶが実家の冷蔵庫からは別のバラバラ遺体が…
冴え渡る狼狽芸
『トレインスポッティング』*1での振り切ったキレ芸から今作の見ているこっちがイライラする情けない狼狽っぷり。感情のバロメーターがぶっ壊れてるカーライルの演技は見事である
とかく登場人物すべての倫理観が最低なのがこの映画の魅力であるのだが、その全員を余裕で食っていくのがカーライルの母エマ・トンプソンのビッチばばあっぷり。
アカデミー賞主演女優で芸能一家、コメディエンヌとして活動していた時期もあり、憑依したかのような下層階級の元売春婦の再現度はまさにコント。
元気いっぱいにクソ憎たらしい。
ちなみに2021年現在ロバート・カーライル59歳、エマ・トンプソン61歳である。これを親子として納得たらしめるエマ・トンプソンのオーラがすごい。
この唯我独尊の母がただ存在するだけで物語はとにかくクソミソの方向へ走り出す。
行動から息子に対する態度から逝き際のセリフまですべてが最低である鬼畜ママをご堪能いただきたい。
控えめにいって最高です。
- 板タブ初使用。むず…かしい。photoshopはよく使うがイラストで使うと勝手が違う。 慣れれば問題ないのだろうけどブラシの管理とか面倒そうだなぁ。慣れよりもイラスト専用ソフトを使ったほうが早そう
*1:トレインスポッティングとは:ポン中と愉快な仲間たち